人口の自然減が大きいのに他の自治体からの流入で人口が増えている「人口横取りランキング」を、ダイヤモンド編集部が独自に作成した。上位を占めたのは首都圏の自治体、とりわけ東京23区だ。2位の豊島区は10年前の調査時、23区で唯一消滅可能性自治体に認定されたが、今回は他の自治体からの「横取り」によりその汚名を返上したことになる。特集『人も財政も消える街』(全6回)の#2では、「人口横取りランキング」を公開するとともに、豊島区の消滅可能性都市からの脱却に向けた施策とその効果について検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
消滅可能性都市から脱却も
“ブラックホール型自治体”とされた豊島区
2014年5月8日、豊島区は日本創成会議の報告書、いわゆる“増田レポート”で消滅可能性都市とされた。
豊島区にとってその衝撃は大きかった。当日には、当時の高野之夫区長(故人)が「大変驚いている」とのコメントを出し、約1週間後の16日には「豊島区消滅可能性都市緊急対策本部」(同年8月に持続発展都市推進本部に改称)が設置された。
7月19日には、豊島区在住・在勤の女性を集めた「としま100人女子会」が開催され、街づくりについて話し合われた。8月からは女性委員32人による「としまF1会議」を開催し、子育て支援窓口である「子育てナビゲーター」の設置、子育てに欠かせない公園の整備などの案をまとめた。
保育園も増設した。14年4月に52カ所だった保育園数は24年4月に115カ所まで増えた。17年4月には待機児童数ゼロを達成。18年には40年ぶりに人口が29万人を突破した。
こうした努力が実り、20年から50年の人口推計に基づく今回の人口戦略会議の判定では、豊島区は消滅可能性自治体から脱することができた。推計は、足元の人口の動きを反映する。それ故、自治体の取り組みで人口が増加に転じる、または減少ペースが緩やかになることで、消滅可能性自治体から脱することができるのだ。
ただ、豊島区を含めた東京23区の多くの自治体は今回、人口戦略会議によって“ブラックホール型自治体”に分類された。
ブラックホール型自治体とは何か。
国立社会保障・人口問題研究所の通常の人口推計は人口移動を想定している。移動想定の人口推計とは、引っ越しで他の自治体から転入、または他の自治体に転出する動き、つまり社会増減が今後も続く前提で推計したもの。消滅可能性自治体もこの移動を想定した推計で判定される。
これに対して、同研究所には封鎖人口という人口推計もある。これは、現在(今回の場合は20年時点)以降、転入・転出がないものとして、当該自治体における死亡や出生のみの自然増減による人口の変化を推計したものだ。
ブラックホール型自治体とは、消滅可能性自治体ではないが、封鎖人口ベースで、20~30代の女性の人口が20年から50年の30年間で半減する自治体を指す。つまり、他の自治体から人口を“横取り”することで、20~30代の女性人口に、減少ペースの抑制、ないしは増加をもたらしている自治体である。
今回、ブラックホール型自治体を含め、他の自治体からの転入・転出で人口減ペース抑制、または人口増となる自治体をあぶり出すために、ダイヤモンド編集部では「人口横取りランキング」を作成した。
具体的には、移動想定の人口推計における20~30代の女性の増減率から封鎖人口の推計における20~30代の女性の増減率を引いた値に、総人口の推計において同様に算出した値を加えたものを求め、その値の大きい順にランキングした。
次ページ以降、人口横取りランキングを掲載するとともに、豊島区を例に自然増減ベースの人口の動きや、人口増加に向けた対策を取り上げる。