未来を予測する最良の方法は
みずから未来を創造すること

 これは「パソコンの父」と呼ばれるアラン・ケイの言葉である。技術だけで社会課題が解決されることはほとんどない。しかし、イノベーションを通じて技術を利活用することで解決されることは多い。ブロックチェーンも例外ではない。世界経済においてブロックチェーンが多くの産業部門を変革する可能性があり、そのインパクトは低中所得国では計り知れない。

 先の2つの例は、システムが存在しない、あるいは既存のシステムが信頼できない経済圏において、ブロックチェーンが記録の管理を改善することで経済を発展できることを示唆している。

 新しい世紀を迎えた頃には、その後2004年に創業されるフェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)が出現し、時価総額1兆1000億ドル超の(2024年5月時点)巨大企業に成長するとは想像だにできなかったのと同じように。

 インターネットの黎明期には、ワールドワイドウェブの本質を理解することも、そこから膨大な経済的価値が創出されることもとうてい信じられない、という懐疑論者が大勢いた。ブロックチェーン技術も同様の状況にあるが、インターネットと同じく、世界や世界経済との関わり方を根底から変えてしまうだろう。

 ブロックチェーン技術の可能性を顕在化させるに当たって、課題は山積しているが、理解も進んでいる。たとえば、レガシーシステムからまったく新しいデータアーキテクチャーへの移行に要するコストから、いかなる類いのものでも新機軸の導入に伴う社会や人々の行動の不確実性まで、その範囲は多岐にわたる。

 このような現実的な課題があるにもかかわらず、ブロックチェーン技術は、過去何世紀にもおける市場創造イノベーションのように、まったく新しいカテゴリーのイノベーションを生み出すであろう、と信じるに足る理由がある。