ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

政府による支援なども行われ、新たなイノベーションやビジネスモデルの創出が期待されるスタートアップ。なかでも、成長ポテンシャルが高いのは「従業員スピンアウト」という形態だ。従業員スピンアウトのアドバンテージや特徴を解説する。※本稿は、加藤雅俊著『スタートアップとはなにか――経済活性化への処方箋』(岩波新書)の一部を抜粋・編集したものです。

従業員スピンアウトは
成長ポテンシャルが高い

 最近注目されているのが、既存企業の元従業員によって設立される「従業員スピンアウト」と呼ばれるスタートアップです(Yeganegi et al., 2024)。最も有名な例の1つは、フェアチャイルドセミコンダクター社から独立したゴードン・ムーアとロバート・ノイスによって、新しい技術を追求するために設立されたインテルでしょう。

 なぜ従業員スピンアウトは注目されているのでしょうか。一言で表すとすれば、成長ポテンシャルの高さと言えるでしょう。

 たとえば、米国のタイヤ産業、自動車産業、半導体産業を対象に分析した研究によれば、既存企業から独立して設立された従業員スピンアウトのパフォーマンスは、それ以外の参入者のパフォーマンスより高いことが示されています(Klepper, 2009)。

 また、ハードディスクドライブ産業を対象にした研究からは、産業を支配していたリーダー企業が、自社から独立して設立された従業員スピンアウトによって市場でのトップの座を奪われ、従業員スピンアウトが産業の進化のプロセスにおいて大きな役割を果たしたことが明らかになっています(Christensen, 1993)。

優秀な社員たちほど
勤務先に見切りをつける

 なぜ従業員スピンアウトは登場するのでしょうか。従業員スピンアウトのトリガー(引き金)には、いくつかの可能性があります。これまでの研究において特に注目されてきたのが、勤務先の企業における戦略上の見解の不一致や文化的なフィットの欠如といった、企業と従業員との間の軋轢を要因とする考えです(Klepper & Thompson, 2010)。

 たとえば、従業員が企業のコア事業とは異なる事業アイデアを追求したいと考えたとしても、官僚主義的な風土を持つ企業はそのような従業員の行動を奨励しないでしょう。