2011年には、暗号通貨取引所、〈マウントゴックス社〉を買収。

『私はビットコインに魂を売った』と題する、カルプレスに関する本の共著者、ジェイク・エーデルスタインはこう語る。

《このプラットフォームはもともと、〈マジック・ザ・ギャザリング〉という人気カードゲームで、カードをトレードするためのものだった。〈ポケモン〉にどこか似ているこのシステムは、暗号通貨を扱うためではなかったから、欠点がたくさんあった。マルクが会社を買収した時点で、すでにかなりのビットコインが紛失していた。》

 にもかかわらずビットコインは、〈シルクロード・ウェブサイト〉という、いわば闇サイトで、麻薬や不法商品を買うのに好都合の通貨だと判明。とたんに、人気が急上昇。顧客ベースも急拡大した。マウントゴックス社は驚くほど急成長し、ある時点で、「わが社は全世界のビットコイン取引の80%を支配している」と豪語した。

 カルプレスは成功を享受した。月1万1000ドルの豪勢なアパートに住み、ベッドは数万ドルのキングサイズ。日本人女性と結婚し、子供ももうけた。

カルプレスは被害者だと
アメリカ国税庁も認めた

 ところが2014年、すべてがガラガラと崩れ落ちた。マウントゴックス社が、カルプレスの主張によると「大規模なハッキングによって」、推定85万ビットコイン(当時の貨幣価値で約5億ドル相当)を失ったからだ。

 マウントゴックス社は倒産し、破産による保護を申請。検察当局は、データ改ざんと、顧客の口座から約300万ドル盗んだ疑いで、カルプレスを追及した。

 カルプレスは逮捕、再逮捕を幾度か繰り返し、日本の拘置所で合計1年ほど過ごすハメになった。毎日数時間の尋問を受け、デブだった体は、かなりの体重を失った。

 続く倒産の審問では、マウントゴックス社は、ビットコイン1個につき483米ドル相当を、債権者に返金するよう命じられた(合計すると、450億6000万円、米ドルで4億ドル)。

 幸運なことにカルプレスは、会社に残っていた20万ビットコインを、管財人に預けていた。その価値が、彼の勾留期間中にうなぎ上り。おかげで債権者たちは、破産で失ったよりも高い金額を、手に入れたことになる。