ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務しPRトップをつとめ、「もっともパリジェンヌな日本人」と業界内外で称された藤原淳氏が、パリ生活で出会った多くのパリジェンヌの実例をもとに、「自分らしさ」を貫く生き方を提案したのが、著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』。著者が言うパリジェンヌとは、「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出し、人生イロイロあっても肩で風を切って生きている人のこと。この記事では、本書より一部を抜粋、編集しパリジェンヌのように自分らしく生きる考え方をお伝えします。

【パリジェンヌが教えてくれた】劣等感とどうつきあっていけばいいのか?Photo: Adobe Stock

パリジェンヌだって時には人を羨んだり、自信をなくしたり、劣等感を感じたりします

 そうは言っても、ありのままの自分をさらけ出すのはとても難しいことです。「自分に自信を持っている」と胸を張って言うことができる人、少ないと思います。劣等感が一切ない人など、この世の中に存在しないのではないでしょうか。パリジェンヌだって時には人を羨んだり、自信をなくしたり、劣等感を感じたりします

 私の最大のコンプレックスは長い間、ペシャンコの髪の毛でした。量が少ない上に、髪の毛一本一本が細く、後ろ髪も前髪もまっすぐなのです。サラサラと指の間から逃げてしまうので、まとめ髪にするのもひと苦労。どんな髪型にしてもあまり決まりません。

 私は幼少期をイギリスで過ごし、6歳の時に帰国した後、地元の小学校に移るまでは、横浜のインターナショナル・スクールに数年通っていました。仲が良かった友達はフサフサの金髪が愛くるしいアメリカ人。西洋のおとぎ話から抜け出してきたような子でした。私の劣等感はそこから始まりました。「フサフサ髪いいな!」という単純な憧れが、彼女と自分を比べることによって、「自分の髪はペシャンコ!」という劣等感につながってしまったのです。

髪の毛がフサフサになれば、憧れの自分に近づくことが出来ると心から信じていた

 中高時代は同級生に呆れられながら、そして学校の規律を(こっそり)破りながら、せめても、と前髪にパーマをかけるという無意味な行動をとり、大学に上がった頃には長い髪をクリクリのソバージュ・ヘアにしていました。全く似合っていなかったことは言うまでもありませんが、その頃の私は、髪の毛がフサフサになれば、憧れの自分に近づくことが出来ると心から信じていたのです。

 私と犬猿の仲にある同僚のファニーは、私が夢見るフサフサ髪をしています。ナチュラル・ウエーブが優美な弧を描き、うっとりしてしまうくらいです。その髪をファニーは時々手でクルクルとまとめ上げ、鉛筆を挿しておしまい。いとも簡単にシニヨン・ヘアに仕立て上げてしまいます。サラサラ髪の私にはどう転んでも真似できない技です。

 そんなファニーがある日、

「このボサボサ髪、どうにかならないかしら」

 とぼやいているではないですか。ファニーの悩みは湿気。雨続きだったその週、髪の毛のボリュームが増してしまい、手に負えない状態だというのです。極め付きにファニーは私を見ながら呟きました。