アンチエイジングは
中高年から始めるのでは遅い

 日頃から「アンチエイジングは中高年の専売特許で、若年層には関係がない」といった風潮がありますが、ここまで述べてきたように、若い頃からの老化抑制が非常に重要なのです。

 たとえば、タウリンが寿命の延伸や身体機能を維持するために重要だという報告もありますが、幼少期のタウリン欠乏は、骨格筋、視覚、中枢神経系の機能障害を引き起こすことも昔からよく知られています。我々が開発したICEマウスでも、若いときのストレスがエピゲノムを変化させ老化を加速させることが示されていて、生物学的年齢を加速させないためにも幼少期や若年期からの適切な老化コントロールがとても大事であることがわかります。

 厚生労働省の発表によると、2023年度中に100歳を迎える人は、2023年9月1日時点で4万7107人(男性:6727人/女性:4万380人、見込み含む)、同時点で100歳以上の人の数は9万2139人でしたが、たった60年前の1963年は153人でした。予測の範疇を超える出来事を「ブラック・スワン」と呼ぶことがありますが(古くから欧州で存在しないと思われていた黒い白鳥が17世紀末に西オーストラリアで発見されたことに因みます)、100歳以上の人口が60年で600倍以上になることを一体誰が予測できたでしょうか。

 実際、彼らセンチネリアンたちは、どのような幼少期を経てきた人々なのでしょう。

 センチネリアンやスーパーセンチネリアンの研究においては、幼少期からの食事や運動、喫煙を含むライフスタイル、体重、さらに多くのセンチネリアンが寡婦であることなどが知られています。

 肉、卵、乳製品の代わりに穀物、魚、野菜を中心とした食生活、そして高齢になるまで積極的に働くことや思いやりのある地域社会との絆など、近年ますます重要視されている条件も彼ら一人ひとりが備えているようです。他にも、「スーパーセンチネリアンの人たちは、衛生状態が決して良いとはいえない牧場の近くなどに住んでいて、幼少期に感染症に罹るなどストレスを受けた人も多い」といった説もテレビの放送などでは見受けられます。