一口に「ITベンダー」と言っても、そこには実に多様な種類の企業が存在する。「わが社もそろそろDXを……!どこに頼めばいいのか。長年うちのシステムを任せていた大手A社に頼んでみるか……でもそれでいいのかな」と悩む企業は多いのではないだろうか。特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』(全16回)の#14では、そんな悩める企業向けに「ITベンダー図鑑」をお届けする。図鑑では32社を9タイプに分類。DX時代に付き合うべきITベンダーと「切る」べきベンダー選別の参考にしてもらいたい。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
32社を8タイプ+1の分類で大図解
付き合うべきITベンダーはどこ?
ITベンダー、つまりITシステムを提供する会社は、上場している大手から中小まで実にさまざまな企業が存在する。さらに、このDX(デジタルトランスフォーメーション)全盛のご時世、ほとんど全ての会社が「DXを支援します」とパンフレットにデカデカと書いてくる。さて、DXの波に乗り遅れたくないなと日々感じているわが社は、いったいどこと付き合えばいいのだろうか?
「DXで新しいビジネスをつくるITシステムをユーザー企業が内製化する動きは止まらない。しかし、完全に自社だけでできるユーザーは現実的にはほんの一部。顧客の内製化を支援・先導でき、顧客と共同で新たなシステムをつくることができるベンダーが今後選ばれるだろう」とIDC Japanの植村卓弥グループマネージャーは指摘する。では、そのニーズに答えてくれるベンダーはいったいどこなのか……。
今回は、そんな悩める企業向けに、ダイヤモンド編集部が取材に基づき、あまたあるITベンダーを九つに分類。その特徴と強み弱みを「会社全体の性質」と「実際に顧客と接する社員の性質」を基に、図鑑化してみた。32社が具体名で登場する。
まず(1)「大手SIer」。ITゼネコンとやゆして呼ばれることもある。過去の多くの大企業や官公庁の大規模システムを「元請け」として受注し、多層下請け構造の頂点で仕事を采配を振るという、現在の日本のSI(システムインテグレーション)業界の仕事の仕組みを作った企業群だ。
もともとコンピューターメーカーであり、自社のハードウエア、ソフトウエアの活用が主流で、最新の技術へのキャッチアップは遅い。ただし、競争環境の激化であらゆる分野にライバルが出現し、優雅に差配していては競争に勝てず、コンサル的な動き方を志向するようになってきている。最後まで逃げない日本企業的な誠実さはあるものの、合議体質でスピードは遅いという弱点も。そして「働かないおじさんが一定数いる」(業界関係者)との評がもっぱらだ。顧客にとっては嫌過ぎるが、そういう担当者に当たってしまうという「地雷」もはらんでいる。
●NTTデータ 官公庁に強く、1980年代から金融機関でデファクトのプラットフォームANSERなどをベースに金融機関もがっちりグリップ。実は体育会系SE(システムエンジニア)が多いとか
●NEC 営業が強く、SE部隊も課長以上は営業部門への異動を経験させている。顔認証を大絶賛爆推し中。米マイクロソフトのAzure、米アマゾン・ドット・コムのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)とも戦略提携してクラウドも頑張る
●富士通 国内で実質的には唯一残ったメインフレームメーカー。メガバンクにやたらに強い。別会社Ridgelinezを立ち上げDX企業転換をアピール中
●日立製作所 海外で1兆円をかけて買収した米グローバルロジックや製造業向けDXには定評。一方営業職が弱く、対外的にしゃべれる人間が不足している
次ページからは残り八つのITベンダーのタイプを解説していく。あなたの会社にとって「駄目ITベンダー」はどのタイプ?企業にとっては知っていればDX推進に役立つし、IT業界で働いている人にとっては転職や昇進に大いに参考になるはずだ。具体的な社名と共に見ていこう。