授業は、企画の「プログラム」と実践の「プロジェクト」

 その後、万浪さんは、神奈川大学の社会連携センター観光ホスピタリティコーディネーターとして、同大学の学生たちを対象にした「グローバル研修企画」を展開。さらに、非常勤講師として教壇に立ち、産学協働による「課題解決型教育プログラム」の推進を行った。現在は静岡産業大学経営学部の准教授となり、ビジネスパーソンから大学教員に転身――立場を変えながらも、実務の内容は一貫している。

万浪 教育界と産業界にさまざまな動きがあったコロナ禍の2020年から2022年にかけて、私は海外留学制度やアクティブ・ラーニングをはじめとした大学の教育カリキュラムの研究を重ねながら(*5)、自分自身の活動を整理していきました。海外インターンシップ、オンライン留学、PBL、フィールドワーク……そうして、現在は大学の一教員として、実際の授業を通じて、企業と学生の出合いの場を作っています。

*5 万浪靖司さん執筆論文「留学業界と旅行業界との融合によるTRAVEL&EDUCATION業界の事業モデル アカデミック留学、語学留学、グローバル研修が形成する新事業モデル」(2020年)、「Withコロナ時代における留学業界の変化と対応~プログラムメーカー経営の変化~」(2021年)など

 万浪さんが行う授業では、企業からの「お題」に対して学生が取り組むプロセスを、「企画フェーズ」と「実行フェーズ」の2段階に分けているという。

万浪 学生が課題解決の方法を探ったり、新サービス・商品の開発を企画したりするフェーズを「プログラム」、それを実践するフェーズを「プロジェクト」と呼んでいます。

 まず、「プログラム」の冒頭で、「お題」について、企業の担当者にお話をしていただきます。課題の背景や自社理念の説明などがなされる講義です。それから、学生たちがグループに分かれ、課題を整理し、現状を分析し、私がファシリテーターとして入ったうえで、グループごとに提案書を作っていきます。そして、学生が企業に対してプレゼンテーションを行い、企業から講評をいただきます。結果、「この提案はいいですね!」というものが「プロジェクト」のフェーズへ移ります。

 神奈川大学での昨年度(2023年)は、4月から7月までの1セメスター全14回の授業で、最後が企業へのプレゼンテーションでした。そして、夏休み期間中に、現地である台湾に行き、課題解決方法に取り組む「プロジェクト」を行いました。海外への渡航は自由参加ですが、授業内容を記したシラバスでは、「プログラム」と「プロジェクト」がセットのカリキュラムになっています。