大学と企業の接点や連携・協働を増やすことが大切

 文部科学省が提唱する「主体的・対話的で深い学び(*8)」――そのための手段が、PBLをはじめとしたアクティブ・ラーニングの実践だが、“主体的・対話的な姿勢”の学生を企業が新入社員として迎え入れたとき、人事担当者や職場の管理職、先輩社員はどうすればよいのだろうか。

*8 文部科学省「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」のPDFはこちら

万浪 新入社員研修をはじめ、入社後の研修メニューが大学での学びとシームレスになるとよいと思います。企業に入ると、まずは、座学中心のビジネスマナーの研修を受け、社会人としての基礎を習得して、それぞれの組織に配属となります。そして、OJTなどで実務を学んでいくわけですが、配属前に、新入社員にPBL的なグループワークを行わせてはいかがでしょう? 学生時代に授業で行ったことを、他大学出身の同期入社の仲間たちと行い、新卒のフレッシュな頭で企業の課題に向き合ってみる。企業によっては、採用活動の一環としてのインターンシップで、PBL的なグループワークを学生相手に実施していますが、新入社員が行うことにも価値があると思います。

 日本の全国の大学で義務化されている「キャリア教育(*9)」――その科目に欠かせないのが、企業と学生の出会いだ。多くの大学が、就職活動の一環ではないインターンシップ(就業体験)や企業経営者の講演などを取り入れてはいるものの、企業側からすれば、“大学とどうつき合えばいいのか分からない”といった状況がうかがい知れる。

*9 キャリア教育とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」のこと(中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について/答申」より)

万浪 大学の1年生から4年生の間で、企業と学生が接することのできるステージは大きく分けて3つあると思います。いちばん最後の段階が、学生の就職活動、つまり、企業の採用活動時です。ここが大きな位置を占めるのですが、学生からすると、就職活動における社会人との出会いは、川の向こうからすごいプロがやって来たというイメージです。スポーツに例えると、観客とプロ選手ほどの壁があるなかで、その壁を乗り越えるのに積極的な学生もいれば、消極的になってしまう学生もいる。ですから、就職活動前の、大学2年の後半から3年にかけての時期に「プロ選手」を知っておくことが大切で、PBLなどの授業を通じて、学生が社会人に出会い、知見を深めていく必要があります。そして、1年生から2年生にかけての時期では、一線で働く社会人が、授業のゲストスピーカーとして、大学に赴くことを私はお勧めします。

 しかし、「言うは易し」で……就職活動以外で、企業側の者と学生との出会いは難しいものがあります。「産学連携でやりましょう」と、企業とのコラボレーションを大学側が呼びかけるケースもありますが、企業側が「PBLのお題としてこういうものはいかがですか?」と大学に提案し、実現するケースが増えていくといいですね。

 また、大学側には、企業関係者の教育への介入を嫌がる傾向もありますが、あくまでも、教育カリキュラムは大学が作ることを前提に、産学連携を深めるかたちで、企業と大学が協働していくことが重要だと私は思います。