従業員の「やる気」を引き出す3つの要素

 経営学の最新研究の一つである『従業員の仕事への情熱評価モデルの実証的研究』(2018年、モントリオール・ケベック大学) をもとに、稲盛氏の行動を分析してみよう。この研究は調査結果を以下のようにまとめている。

《従業員が仕事についてどう考え、どんな行動を取るかを説明するために、基本的な心理的欲求がどのような役割を果たしているかを調べました。全体として、従業員が会社の環境、仕事の内容、人間関係に対して良い評価をすると、彼らの心理的欲求(自律性・有能感・関係性)の満足度が高まることがわかりました。これらの心理的欲求が満たされると、仕事に対する意欲や情熱が高まり、それが仕事に対する意図(目標達成・努力・協力・推薦・継続)に良い影響を与えることが示されました》

 リーダーの側は、従業員が下記3点を満たすように努力する必要がある。

1.自律性:自分の行動を自分で決められること。

2.有能感:自分が仕事をうまくこなせると感じること。

3.関係性:他の人と良い関係を築けること。

 この3つが与えられると、人は仕事への情熱が増すということだ。同研究は、こうも指摘する。