夜遅く帰社した社員に稲盛は…

《稲盛は単に会社へ帰れと命令するだけではない。自分は工場で皆と遅くまで働いている。営業マンは京都・大阪・神戸と飛び回って帰りが遅くなる》

《稲盛はその結果を聞こうと、戻るまで待っている。もう帰りそうな頃だと思うと、門の外まで出て待っている。帰ってくると「ヤアご苦労さんだった。受注はどうだったか」と尋ねる。自然に心から出るこういう心配りがあってこそ、皆喜んで会社へ帰ってきて報告できたのである。帰ってきても、上役も誰もいないのでは、報告は明日でよかろうと、直接自宅へ帰ってしまうようになったであろうが》

(「心の京セラ二十年」)

 しんどい思いをして会社へ報告しに立ち寄ると、夜遅くまで働いている仲間とそして稲盛氏がいて、自分の頑張りを報いてくれるというわけだ。

 リーダーが自分の頑張りを認めてくれることで、自分が仕事をうまくこなせると感じることができ、一緒に夜遅くまで頑張る仲間がいることで他の人と良い関係を築くこともできた。有能性と関係性はこれで満たされたというわけだ。