たとえば、小学生の男の子が、好きな女の子に話しかけられると照れて怒ったりしますよね。本当は好きなのに(笑)。この場合、第一感情が「好き」「恥ずかしい」です。でもそれを認めたくなくて、第二感情として「怒って」みたりするのです。

図表:感情の復路――第一感情と第二感情その人の表に出る感情は「怒り」などの第二感情で、内側に本当の気持ち(第一感情)が隠れている 本書より
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隣のデスクからモノがはみ出してくるのが
会社を辞めたいほどのストレスだった理由(1)

 実際にあったビジネスのご相談で説明しましょう。感情を分解することによってストレスが解消された典型的なケースです。

 ご相談に来たのは営業補助をされている30代の女性です。営業担当にとっては、なくてはならない有能なお仕事をされていました。女性の隣の席は、仕事をフォローしている営業の男性の先輩の机があります。先輩は外回りをしていて、日中はほとんど会社にはいません。

 まじめな彼女の机の上はいつもきれいに資料が整理されていました。そんな彼女が突然、「仕事を辞めて、もっと自分に向いていることを探したい」と相談に来たのです。

 理由を聞くと、隣の机の先輩が許せないとのこと。先輩は営業に出て、帰ってくると山のようにファイルや資料を積み上げていく。その書類の山が、彼女の机にはみ出てきて、一日に何回もそれを押し戻していてストレスがたまる。意思疎通もできない。だから、もうこんな会社辞めたいと言います。

「ちょっと待って。辞める前にちょっと感情の分解をしましょうか」と私は提案しました。

 先輩の机の上の書類が雪崩のようにはみ出してくるたびに感じていたのは、「怒り」「ストレス」「失望」でした。これが表面上に出てくる第二感情です。

 さらに分解していくと、第一感情として出てきたのは、「無価値観」「悲しさ」「みじめさ」でした。

「会社は男性のほうが多いし、多分女性を大事にしていない気がする」
「営業アシスタントの仕事をバカにされている気がする」
「先輩は私の仕事を認めてくれていない」

 話をしていくうちに、こんな第一感情が隠れていたことに気がついたのです。