ASTのみが高いと、心臓が悪い可能性が出てきます。心不全や心筋梗塞で心筋が壊れると、ASTが血中に出てくるからです。

 実際、ASTは心臓病の診断指標のひとつになっています。もちろん本当に心筋梗塞だったら、悠長に健診を受けるどころではありません。

 しかし心不全の初期など、自覚症状がほとんど出ていない段階なら、ASTがきっかけで見つかることもあり得ます。

 表23は令和2年度(2020年度)の、東京都の特定健診の結果です。ASTは男女とも、異常(51以上)が少なく、大半のひとが基準範囲に入っています。

 ALTについては、男性で若い年代ほど、異常の割合が高くなっています。しかし年齢とともに、徐々に減っているところが注目です。だんだん酒量が減るからか、肥満が解消されるからか、理由は分かりません。

 しかし現役世代でALTが高かったとしても、歳を取れば下がってくると思えば気が楽です。

 なおASTの血中濃度は、肝臓を酷使しなければ10~20時間で、ALTは40~50時間で半減すると言われています。これらの数値が高いのは飲酒が原因だという自覚をお持ちのかたは、健診の3日前から断酒しておけば、意外といい結果が出るかもしれません。

表23:AST、ALTの東京都における特定健診の結果同書より転載 拡大画像表示

その「ガンマ自慢」は危険水域かも?
数値が500を超えたら迷わず治療を

 肝機能の健診項目の1つに、γ-GTPがあります。中高年サラリーマンのあいだでは「ガンマ」と言うだけで通じるほど、お馴染みです。

 酒の席で、数値が高いひとがガンマ自慢を始めることもよくあり、尿酸値(痛風)と共に、中高年の病気自慢のネタになっています。

 正式な名称は「γ-グルタミルトランスペプチダーゼ」と呼ばれる酵素で、肝臓の解毒作用に関わっています。