「私、いじめられているかも…」
アイドル→役者に転じた先輩が嘆いた理由

 これは、私よりも先にグループを卒業したある先輩のエピソードです。役者になった先輩から連絡が来て、「私、いじめられているかもしれない」と言うのです。聞けば、舞台袖に自分のミネラルウォーターが置かれていなかったから。「なぜ私の水がないの? いじめられているの?」と傷ついたそうです。

「仕事で成長する人」「成長しない人」の決定的な差、AKB48から社長に転身して気付いた本質Photo by Motoyuki Ishibashi

 ほとんどの読者の方は何を言っているのか分からないと思いますが、アイドル時代、コンサートの時は必ずといっていいほど、スタッフさんがミネラルウォーターなどのペットボトルを舞台袖に用意してくれていました。喉が渇く前から、先回りして水が置いてあるのが当たり前だったのです。

 こうした環境に慣れてしまえば、「自分の水は自分で用意する」という感覚がマヒするのは当然です。ただ、幸いなことに私は現役アイドルの時に「焼肉IWA」を開業したので、世間一般の常識がそれなりに身に付き、グループ卒業後に今までとは違う仕事現場に行っても、先輩のような戸惑いを感じることはありませんでした。

 他方、一般社会やビジネスの世界はどうだったでしょうか。たとえ焼肉IWAであっても、お客さんの中には当然、私やアイドルのことをよく知らない人もたくさんいます。当初はその点に苦労したというのは前回お話しした通りです。

本連載の前回記事:AKB48→借金5000万円→飲食店経営で大成功!元アイドルが「芸能人の店はすぐ潰れる」を覆せたワケ

 何よりもビジネスの世界、ことさら経営者であれば自分自身で判断、意思決定するのが大前提ですから、すべてを他人に依存することなどありません。収益を生み出すためには自分で行動するべきです。

 実際、焼肉IWAは店長(母)と二人三脚で、この10年間、文字通り汗をかきながら必死に経営してきました。誰かに用意された場所で働くのではなく、自分たちの手でその場所を作り、守っていかなければなりません。でも、それがビジネスというもの。常に生存競争が激しい世界ですが、手を抜かずに何とかやってきました。それがコロナ禍という最大の危機を乗り越えることにもつながったと自負しています。

 一方で、この世界に飛び込んでみると、外から見ていた厳しいイメージとのギャップも感じました。それは、「仕事に対する責任感」についてです。