男女写真はイメージです Photo:PIXTA

失恋の痛みは、愛する人を失うことと同じように深いものだ。この記事では、失恋による心の傷と回復のプロセスを探り、どのようにして成長や新たな愛を見つける手助けができるかを考察する。失恋を乗り越えるための具体的なステップと、心の回復を促す方法についても詳しく解説する。※本稿は、キム・ヘナム『「大人」を解放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)の一部を抜粋・編集したものです。

失恋のサインは特定の行動を
「する」じゃなく「しなくなる」

「別れよう」

「そんなこと言わないで。もっとちゃんとするからさ」

「もういいの。別れよう」

「なんでだよ?」

「もう好きじゃないから」

 男は少し前から気づいていた。彼女はもはや自分に何の興味も持っていないということに。そして、よくげんなりした目で自分を見つめていることに。だが、いざ別れを切り出されたら、ドンと気持ちが沈んだ。何もすることができなかった。

 失恋とは死だ。それは愛する人の死であり、愛されていた自分の死であり、ずっと夢みていた「理想的な愛」の死である。そのため失恋は時として「死と同等の苦痛」として胸に迫る。

 だからこそウェルテルは失恋後に拳銃で自らの人生を閉じ、カミーユ・クローデルはロダンと別れたあと精神を病んで、あわれな人生を送ったのだ。

 ここまで極端ではないとしても、失恋は人生における最も大きな苦痛の1つであり、それによって多くの人たちが苦痛や涙、眠れない夜を経験している。

 失恋は、どんなタイミングでも起こり得るものだ。つき合い始めてすぐということもあれば、長くつき合った末に、あるいは結婚後に経験することもある。

 愛が冷めた事実は、ほんのささいなことからわかる。一般的に恋人同士というのは、2人の間でしか通じない話し方やシグナルを持っているものだ。そして愛が冷め始めた時には、そうしたものから変わっていく。声のトーンが変わったり、あだ名や下の名前での呼びかけがなくなったりするのだ。

 失恋の最初の兆候は、特定の行動を「する」というより、今までしていたことを「しなくなる」という形で表れる。何やら変化を察した一方が話し合いを求めれば、もう一方は面倒くさそうにそれを避け、だんだんと相手に興味を示さなくなる。

失恋を認めず偽りの希望を持つが
現実と向き合い自己卑下に陥る

 変化に気づいたほうは、不安ながらもその事実をどうにか否定して、偽りの希望さえつかもうとするものだ。

 取り越し苦労だと信じて別れを示す明確なシグナルからも目をそらしたあげく、関係修復の可能性を見いだせそうな要素を探してしがみつく。果ては失恋が確実になってもなお完全に知覚をゆがめて、まだ終わっていないという錯覚の中で生きようとする。なぜならその恋はその人にとって希望であり、自分の存在理由になっているからだ。