楽しみながらできる“副業”を見つけることも大切
そんな東野さんも、この夏に53歳になる。企業勤めなら、ベテラン管理職の年齢だ。「同じ時代を駆け抜けてきた同士たちに伝えたいことがあります」と、発する言葉に力を込めた。
東野 同世代の大人たちに向けては、「がんばり過ぎるな、無理をするな」――この一言に尽きますね。かつて、僕には、「力を入れ過ぎない」なんて言っていられない時期がラーメン店の修業時代にありました。同じ店で長く修業を続けていたので、立場的に売り上げを考えなければいけないし、任された業務も重要――その一方、音楽活動も思い描く結果が出なくなってしまい……でも、僕の音楽のファンの皆さんが新曲を待ってくださっているので、自分をかなり追いつめてしまいました。当時、バイクで修業のお店に通っていたのですが、ある日、通い慣れた道を運転しているのに、“自分がどこにいて、何をしているのか”が分からなくなりました。「あれ? いま、何をしているんだっけ?」と。バイクから降りて、その場に倒れ込んでしまい、結果、音楽と飲食業のどちらの仕事もしばらく休むことになりました。故郷の鹿児島に戻り、英気を養い、やがて、仕事に復帰したのですが……忘れられない出来事ですね。
たしかに、企業の未来に若手社員の存在は欠かせませんが、彼・彼女たちの頑張りとともに、40代・50代のベテラン社員の功績は大きいはず。ですから、会社は、その世代の人たちがリフレッシュできる環境をつくり、心が洗われるような施策をとってほしい。そして、当人は、心と体を壊さない程度にやるべきことをしっかり続けること。また、楽しみながらできる副業を見つけるのも、自分の新たな可能性を見出す手段になると思います。
いま、もし、東野さんが企業に勤める管理職だったら、何を心がけて、部下たちにどのような行動を促すだろう?
東野 キーワードは、「人」「心」「思いやり」です。僕がやりたいのは、若手だけのミーティングを定期的に設け、忌憚のない意見をどんどん出してもらうこと。ミュージシャンの世界でもそうですが、ベテランのプレイヤーが驚くくらいに突出した才能を持つ若者はたくさんいます。副業の可否について言えば、能力のある彼・彼女たちが、副業することによって本業を疎かにするとは考えづらい。だから、若い人たちには、外から得た新しい風を組織の中にもたらすことを期待したいです。
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