いま、東野さんが思い描く、“幸せのカタチ”とは?
ミュージシャンとラーメン職人――多忙な“二足の草鞋”で、決して順風満帆ではない道を歩んできた東野さんだからこそ、見えたもの・見えているものが多いに違いない。
2020年初頭に突如として現れた“コロナ”によって、世界中の人々が私生活や仕事との向き合い方を見直し、社会は大きく変わったが、東野さんが身を置く音楽業界と飲食業界はどうだったか?
東野 音楽業界は、コロナ禍でコンサートができなかったり、対面販売でCDがいっそう売れなくなったり、ミュージシャンと所属事務所の力関係に変化が生じたりと、いろいろな問題に直面しました。現在も誰もが試行錯誤を繰り返している――僕にはそんなふうに見えます。飲食業界……特に、外食産業もコロナ禍で大きなダメージを受けました。ニュースで報道されたとおり、明らかにお客さんの数が減りましたから。会社員である僕の兄が言った言葉が象徴的です――「コロナの時期にステイホームしたことが思い出深い。それまでは、家族みんなで、平日に一緒に夕飯を食べることなんてほとんどなかったから」と。同じような人たちが世の中にはたくさんいるでしょうし、家族にとって、それはとてもよいことだけど、飲食店にとっては厳しい状況になって、僕のお店はもちろんのこと、かなりの経営努力が必要になりました。
いまは、どちらの業界もシフトチェンジの段階で、「音楽業界伝説」「飲食業界伝説」というものが徐々に崩壊して、フリースタイルになってきていると思います。この先のゆくえはなかなか読めないけど、「人と人のつながり」が、よりいっそう重要になるでしょう。たとえば、お店なら、商店街や地元に密着した小売店がにぎわってくる気がします。
今年(2024年)、ミュージシャンとしてデビュー31年目を迎えた東野さん。人気曲「幸せのカタチ」の歌詞に、東野さんは、「この道の行方は、きっと、僕しか知らない」と書いている。待望のニューアルバム『No one’s innocent』を今夏にリリースし、現在、全国ライブツアーの真っ最中だが、この先、どのような“幸せのカタチ”を思い描いているのか。
東野 30周年のイベントを、ファンの皆さんやスタッフさんにありがたく創っていただきましたが、僕の音楽活動はまだまだ続き、今年31年目、来年32年目も走っていきます。そして、その先には40周年がある。僕が自分に課しているのは、デビューからアルファベット順にリリースしているアルバムを順次発表していくこと。Aから始まり、Nまできました。「課している」というより、音楽が好きだから続けているのですが……考えてみれば、30周年というアニバーサリーは継続の結果として自然に“いただいたもの”であり、あと10年経てば、40周年も自然に“いただける”はず。「まだまだ、仲間のみんなとやっていきたい!」と気持ちが昂っています。音楽活動は、ファンの皆さんに対する僕の最低限の義務でもあり、ステージに立つためには見た目も重要ですから、以前とイメージが変わらないようにダイエットをがんばって、スキンケアもきちんとやって(笑)、期待を裏切らない自分でありたいですね。
もちろん、ラーメンづくりの仕事も続けていきます。通販だけではなく、実店舗での営業も、機を見つつ再開したい。最高の一杯をお客さまに提供し、人と人のつながりを大切にして、いつかまた、お店の中で皆さんと会うことを楽しみにしています。