「じゃあ、なんで日本人はそんな状態で長生きになったの?」と疑問が湧くでしょう。それはやはり、肉や脂質を摂るようになったからなのです。まず今日本人が低栄養に陥っている、という危険な事実を知っておいてほしいと思います。

コレステロール元凶説の
最大の被害者はまじめな高齢者

 日本人が食べなくなっている、食が細くなっていることは、他の調査からもわかります。

 図17は世界各国の1日の総熱量(カロリー)供給量の推移ですが、日本の低さは一目瞭然です。日本より低いのは、北朝鮮とルワンダだけ。北朝鮮の貧困状態についてはみなさんも想像できるでしょう。ルワンダは民族対立が激しく、かつては大虐殺が行われたこともありました。北朝鮮と同様に、豊かな国とはほど遠いでしょう。

図17:世界各国の総熱量(供給量)の推移(1人1日あたり:kcal)同書より転載
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 しかし、日本は経済大国であり、豊かな国のはずです。そんな日本の栄養状態が悪くなっているのは、「食べられない」からではなく「食べないから」なのです。

 その原因は、「コレステロール害悪説」が大きいと、私は思っています。様々な実態調査によって「コレステロールは悪くない」「下げるとよくない」ということがわかっています。

「コレステロールは悪にあらず」という実態が知られていないのです。それどころか、いまだに「コレステロールは害悪」という風潮が世の中にあり、皆が信じているのです。やはり、大きな問題と言わざるを得ません。

 コレステロールを下げて被害をいちばん受けるのは、高齢者のみなさんです。若い世代は、正直、下げても大きな影響は出ません。免疫力が高いため病気にも打ち克てますし、性ホルモンも十分なので活力もあるからです。若い世代にコレステロール不足の悪影響が出るとしても、風邪や感染症にかかりやすくなることくらいでしょう。

 しかし、高齢者は違います。絶対値が下がっているので、心と体の健康を維持していくには、コレステロールを欠かさないことが、絶対条件になるのです。とくに命にかかわる病気をしたくないなら、絶対に下げてはいけません。