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日銀の金融政策の変更に伴う急激な円高ドル安進行により、自動車業界に逆風が吹いている。想定為替レートより円高が進行すれば業績予想の下方修正は避けられず、株価の大幅下落を招きかねない。今回の急激な円高による大手自動車メーカーの減益額を試算したところ、最も影響が大きいメーカーは7000億円もの減益になることが分かった。自動車業界は円安のメリットを享受してきたが、ここにきて戦略の立て直しが求められそうだ。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

急激な円高は自動車業界にとって大打撃
トヨタの為替感応度は何と「470億円」

「変化に対応できるよう事業構造の構築に努めているが、あまりにも速い動きには追随しにくい」――。7日の決算説明会で、ホンダの藤村英司最高財務責任者(CFO)は足元の為替の動きについて、こうコメントした。24年4~6月期は二輪事業の販売が好調で増益だったが、不安定な相場の動きを見てホンダは、想定為替レートと営業利益予想を急きょ据え置いた。

「植田ショック」が自動車業界を襲った。日銀が7月30~31日に開催された金融政策決定会合で政策金利を0.25%程度に引き上げたことで、為替市場は敏感に反応した。7月3日に161円台後半だった円相場は対ドルで急上昇し、一時141円台を付けた。日銀・内田真一副総裁の市場をけん制する発言を受けて7日には146円台に落ち着いたものの、引き続き不安定な状況が続いている。

 東京株式市場では売り注文が殺到した。8月1日から8月7日までの5営業日でトヨタ株は449円(約15%)、ホンダ株は224円(約13%)、日産株は64円(約13%)下落した。

 急激な円高は、自動車業界にとって大きな打撃となる。主要自動車メーカー6社で為替感応度が突出しているのはトヨタで470億円(東海東京インテリジェンス・ラボ推計)だ。日産が120億円、SUBARUが110億円、ホンダが100億円となっている。三菱自動車の為替感応度は30億円と、トヨタや日産などと比べれば高くないが、北米向けのクルマは輸出に依存しているため、業績へのダメージは少なくない。

 では、営業利益ベースでどれくらいの影響が出るのか。次ページでは最大7000億円に上る各社の影響額を全公開するとともに、米国の景気後退懸念の影響に迫る。