トヨタ自動車系ディーラーの「全店全車種併売」が始まってから4年が経過しようとしている。国内の人口減少で、新車の販売台数が伸び悩む中、販売店同士の競争を促すためにメーカー主導で「トヨタ店」「トヨペット店」などといった販売チャネルの垣根を取り払ったのだ。しかし、ディーラーからは怨念にも近い声が上がっている。特集『崩壊 ディーラービジネス』(全7回)の#6では、トヨタが販売店から利益を搾り取っている実態を明らかにするとともに、ディーラーの本音に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
2020年からの全車種併売開始後
トヨタの販売店軽視が鮮明に
「今年はメーカーも販売店も共に斧を磨く年にしよう」。今年1月末に東京都内で開催された全国トヨタ販売店代表者会議で、トヨタ自動車の国内販売を担当する友山茂樹本部長は、ディーラー首脳らにこう呼び掛けた。
友山氏は、かつて北米のディーラーミーティーグで、「レクサス」の新車販売が低迷していた時代に、北米ディーラーの代表が、「今こそメーカーは斧を研ぐ時だ」として豊田章男会長に斧を贈ったエピソードを紹介。トヨタグループで不正が相次ぎ、一部車種が販売停止に追い込まれている窮地ではあるが、臥薪嘗胆の思いで正常化に向けて準備をすることの重要性を訴えたのだ。
会場は拍手で沸いたものの、一部のトヨタディーラー首脳は、友山氏のプレゼンテーションを冷ややかな目で見ざるを得なかった。全車種併売開始以降、ディーラーを締め付けるトヨタの姿勢に不信感が広がっているからだ。
そもそも全車種併売とは、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の各チャンネルにあった専売車種をなくし、全店舗でほぼ全てのトヨタのクルマを販売できるようにする“規制緩和”だ。
その目的は、販売店同士の競争だ。人口減少で新車販売が伸び悩む中、販売店同士を競わせて、ディーラー網の再編を促す狙いがあった。日本自動車販売協会連合会の関係者によると、「約250法人あるトヨタ系ディーラーを110法人程度までに絞るという見方もある」という。
全車種併売化により、大衆向けのクルマを扱っていたカローラ店やネッツ店で高級車の「クラウン」を扱えたり、トヨタ店で商用向けの「ハイエース」を販売できるようになったりして、恩恵を受けているディーラーが少なくないのは事実だ。
半導体不足で生産が滞っていた反動で、イベント費用やDM費などの販促費を投じなくても、ほぼ定価でクルマが売れる状況が続いていることもあり、ディーラーの足元の業績は好調だ。
ただし、ディーラー側には不満もたまっている。メーカー側が 販売店同士の競争を促そうと、上から目線で流通網にメスを入れていることが、元来、独立心が旺盛なディーラーの反発を招いている のだ。
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