一方で、多浪する人は良くも悪くもマイペース。「浪人生たるもの、必死で勉強しなければならない」という世間的な尺度にはとらわれず、自分がしたくなったときに勉強をする傾向があります。その結果、先述したようなモチベーションの波が起こり、最終的には合否の差につながってくるのです。

 もし浪人生が本稿を読んでいる場合は、「何がなんでも1年間を頑張り切る」というスタンスで受験勉強に臨むことを強くお勧めします。

国公立大の医学部志望者など
努力の末に多浪する人も

 ただし、多浪をしている人の全員が、モチベーションに波があるわけではありません。以前の失敗を受け止めて、真面目に勉強に取り組んでいる人ももちろん存在します。彼・彼女らは当事者意識を持ち、年を重ねるごとに勉強量も増え、着実に知識を積み重ねています。

 しかし、毎年努力を続けても志望校に合格できず、多浪を重ねてしまう――。私が各方面から話を聞く中で、そうした「努力型の多浪生」が特に多いと感じたのは、「国公立大学の医学部」志望者です。

 ご存じの人もいるかと思いますが、医師免許の取得には年齢制限がありません。そのため、別の大学・学部を卒業したり、社会人経験を積んだりしてから、医学部に入り直す人も存在します。実際、医学部の現役学生や医師の中には、割と多浪経験者がいます。「何浪しても、最終的に医師になれればいい」と考えている受験生・親御さんもいるようです。

 バックグラウンドはそれぞれ違いますが、医学部志望の多浪生は目標に向けて努力を続けています。それでも、彼・彼女らが浪人の年数を重ねてしまうのはなぜでしょうか。

 その理由は極めてシンプルで、国公立大学の医学部が「狭き門」だからです。二次試験はもちろんのこと、共通テスト(旧センター試験)でボーダーラインとされる「平均得点率85%」を叩き出せるか否かに、そもそも大きな壁があると言えます。

 たとえば私の知人には、医師だった父親の遺言を叶えるため、神戸大学を卒業後、国公立大の医学部に入り直した人がいます。彼は就職活動を行い、大手企業の内定も得ていましたが、それを蹴って再受験を決めたのです。しかし、医学部合格という目標を達成するために努力を重ねたものの、4浪を重ねた末に断念しました。

 彼は兵庫県有数の進学校を出て、センター試験(当時、以下同)の得点率で80%程度が目安となる神戸大学に現役合格しています。このことからも、基礎学力があるのは疑いようがありません。

 浪人生活に突入してからは「他の受験生に勉強を教えること」に時間を割き、自身の勉強が手薄になった時期もあったそうですが、すぐに軌道修正して努力を続けました。