結果、模試では多くの国公立大医学部で「A判定」を叩き出し、周囲から「順当に受かる」と評価されるレベルに達しました。しかし、毎年のセンター試験では80%前後の得点に終わり、目安の85%にはギリギリ届かず。2次試験で挽回するも、惜しくも不合格になるという受験結果を3年繰り返したのです。

 彼は結局、最後の年に86%に到達したのですが、前期試験で落ちて「今年でダメだったらもう受からない」と医師になるのを断念。その後は別の医療関連職を目指し、専門知識を学べる「医学部ではない学部・学科」に進学しました。

「多浪生=全員が怠惰」だとは限らない!
9浪はまいが伝えたいこと

 こうした多浪生は「もう少しでいけるのに、なぜ?」「判定的には合格確実なのに、なぜ?」と冷ややかな目を向けられがちですが、周囲の期待に応えるため、ものすごいプレッシャーを背負い、毎日必死で勉強をしています。

 そこまで努力していても、「得点率80%→85%」という細部を詰める作業に数年かかるケースがあるのが受験の恐ろしいところです。知人のように「86%」を達成しても、それでも不合格になることもあります。そうした人は必ずしも「怠惰だから落ちた」とは限りません。「1浪と多浪の差は、実は紙一重だった」ということもよくあります。

 皆さんの周囲にも多浪生・多浪経験者がいるかもしれませんが、その背景にはさまざまな価値観や事情があるのです。以前は「モチベーションの波」があったとしても、紆余曲折を経て課題を克服し、難関大に合格したという人もいます。

 ですので、「多浪」というだけで身構えず、人とはちょっと違う状況で戦ってきた彼・彼女らの人生に思いを馳せていただければ、当事者の私としても嬉しく思います。