太平洋戦争に終止符が打たれてから、79年目の夏を迎えた。世界から一向に戦争がなくならない現状を憂い、今後の平和教育を考える意味で、日本の各地に残された戦争遺跡に着目してレポートする。(フリーライター 友清 哲)
戦争の語り部が
不在になる時代に備えて
戦後79年。これはつまり、当時10歳だった子どもが間もなく90歳を迎えるということであり、戦争体験者の多くが鬼籍に入ろうとしている現実がある。
団塊ジュニア世代である筆者は、小中学生の頃に課外授業の一環で、戦争体験者から戦時中のエピソードを直接聴く機会が何度かあり、あまりにも凄惨な戦禍の実態に震え上がったものである。しかし、戦争をリアルに知る世代がいなくなれば、そうした機会も失われてしまう。
では、現代の子どもたち、そしてこれからの子どもたちは、どのような形で戦争の悲惨さと不毛さを学べばいいのか。
体験談に触れる機会が失われるなら、せめて当時の遺構を貴重な物証としてできるかぎり記録し、保存することで、平和教育に生かすべきではないか。筆者が全国各地に眠る戦争遺跡をルポルタージュするようになったのは、そうした課題意識からのことである。
戦争遺跡は実は、我々の日常のすぐそばにも眠っている。なかには形を変え、それと認識されないまま記憶から埋もれてしまっているものも少なくないのが実情だ。例えば、神奈川県横須賀市の街中には、かつての防空壕を転用した車庫や倉庫が多く見られる。
あまり肩肘張らずに、日常の延長線上にあるものとして戦争遺跡に注目してみてほしい。ここでは、筆者がこれまで記録してきた戦争遺跡の一部を選りすぐり、レポートしていきたい。