秋田犬から植毛手術まで
要人の希望は多種多様

 私の場合、ジョージア政府の上層部とはだいたい直接やりとりができる関係にあります。しかし、数カ月先の訪問の細かい旅程まではやりとりができないのが常であり、日程がいよいよ近づいてから一気に詳細を詰めることになります。いざ来日した際には、大統領や大臣クラスは、スケジュールがすべてスムーズであるようにしっかりと管理する部門があり、まず出席が必須の予定を滞りなく進行できるよう手配します。それを除いた、日本を案内できる時間は限られています。

 私が要人のスケジュールを設計する上で意識していることは、遂行可能なスケジュールの120%以上の過密な案を提案することです。すると、相手はその中でいろいろと吟味した上でフィードバックしてきます。こちらが提案したもののいくつかは必ず却下されるのです。でもそれは想定済みです。むしろ、その取捨選択を見ることで相手の考えや方針が確認できるのです。

 ジョージアから遠く離れた日本に来るとなると、個人的に滞在期間中にしてみたいこと、手に入れたいものなどに対するこだわりを持っているケースもあります。過去には盆栽、秋田犬のような日本らしい犬、禅ローズという日本独自のバラの花、特定の薬、工具、ウォシュレット、そしてなんと日本刀などを求められたことがあります。植毛やちょっとした手術の依頼を受けたこともあります。いただく希望は実に多種多様です。外交官って、結構骨の折れる仕事なのだと少しはわかりましたでしょうか?(笑)

 このように相手とキャッチボールをしながら、スケジュール案を組み替えたり削ったり新しい予定を入れたりして、最終的なスケジュールを固めます。この時点でも「詰めすぎ」くらいの方が融通がききます。「あれもこれもやりたかったが、時間の都合でこれはパスした」という場合、「次にまた来たときに行ってみたい」という期待を持って日本を発つことになりますが、スケジュールを少なめにしていたことによって、せっかくの滞在中にヒマな時間ができてしまったら愚の骨頂で、「日本はアクティビティに乏しい国」「やることがなくて退屈だった」という印象を与えてしまいます。