ジョージア大統領が日本で訪れた意外な場所、駐日大使「みんな知っています。喜んでいただけました」写真はイメージです Photo:PIXTA

著者は駐日ジョージア大使。重要な職務の1つが、来日したジョージアの要人をおもてなしすることだ。要人たちの滞在期間は、せいぜい2日程度。その短い時間で、日本の魅力を伝えるべく、無駄なく濃密なスケジュールを組まねばならない。グルメ、観光のみならず、中には「日本犬を買って帰りたい」「植毛の施術を受けたい」などの要求をされることもあるという。その驚きの激務とは。本稿は、ティムラズ・レジャバ『日本再発見』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

世界の国の中で
日本は稀有な部類

 世界にはいろいろな国があり、いろいろな人種がいます。日本には自分たちの言語、文字、文化、伝統、文学、芸術もあればアニメ、マンガのような「日本といえば」と言われてすぐに思いつく特有のポップカルチャーまであります。「これぞ日本」「日本人」と言えるもの、説明できる要素がたくさんあります。日本人はこのことを幸せに思うべきだと思います。

 国によっては、「自分は○○人だ」と言っても隣り合う国と同じ言語、文化、民族であることもままありますし、そのせいでナショナル・アイデンティティのゆらぎが生じたり、むりやり隣国との違いを求めることになって軋轢や差別が生まれたりします。あるいはひとつの国の中に異なる文化や宗教、人種同士を有する人たちを包摂するために莫大な労力をかけなければいけないケースもあります。

 そんな中で、国民がおおよそ共通した言語を話し、年間行事や祝日の大半を共有し、さらに「日本の文化といえばこれ」「日本の食といえばこれ」といった「日本っぽいもの」のイメージが諸外国に広く流通している。これは日本の大きな財産です。

 ジョージアにも土の中に埋めたクヴェヴリという器で発酵させて製造するジョージアワインをはじめ、ジョージアらしい独自の文化がたくさんあります。しかし、ジョージアの場合は国が小さく、世界からすれば、ジョージアのことをよく知っている方が珍しいのも事実です。

 だから外国の方と話すときは「ジョージア人?ジョージアってどこにある国?何語を話すの?どういう文化があるの?ふだん何食べてるの?」といった素直な質問から入ることの方が多いかもしれません。むしろ、初対面の外国の方に「ヒンカリとハチャプリが大好きなんだ」「ワインの発祥の地だよね」「ジョージアの民族合唱すごいよね」などとコメントをいただくと「よくご存じですね」と珍しく思います。

 けれども日本なら「ああ、日本人ね。アニメ!スシ!ゲイシャ!」みたいなステレオタイプは、最低限国際的な認知を得ています。そのくらい著名な文化があるわけです。これ自体が、全世界に200近い数ある国の中では稀有な部類だと言えるのです。