早くやせたい気持ちの「Why?」を考えて努力の方向性を見直すうえで、樺沢紫苑先生(編集部注/精神科医)が定義していた3つの幸福が参考になります(図1)。

図表:3つの幸福同書より転載
拡大画像表示

 私たちの脳に幸せを感じさせるのは、3大幸福物質(セロトニン、オキシトシン、ドーパミン)の働きです。

 セロトニン的幸福とは、健康の幸福のこと。心と身体の健康のことであり、幸せの基盤になるものです。

 オキシトシン的幸福とは、つながりと愛の幸福のこと。友情が芽生えているなど良好な人間関係が構築できている時や、コミュニティへ所属した時に感じるものです。

お金と時間を注ぎ込むように
仕組まれているダイエット商法

 ドーパミン的幸福とは、お金と成功の幸福のこと。達成、富、名誉、地位などを得た時に感じるものです。

 セロトニン・オキシトシン的な幸福というのは、「リラックス」「楽しい」という気持ちでゆっくり長続きしますが、ドーパミン的な幸福は花火のように打ち上がって短時間で消えていきます。

「即やせ」を求めたくなるのは、ドーパミン的な幸福を追い求めているからです。朝の体重計の増減で一喜一憂したり、誰かに言われる「やせた?」でダイエットの効果を確認するのも同様です。瞬時に強い気持ちが生まれるので、その感覚に依存した状態に近いダイエットになってしまいます。

 世の中のサービスは「すぐに、簡単に、劇的に」コンプレックスを解決できるように夢見させてくれるものが横行しています。グングン英語が上達するとか、簡単にお金持ちになるとか、1日1分やるだけで即やせするとか。

 しかし本当は、ドーパミン的幸福をもたらす方法で、人々の依存を誘っているだけ。ドーパミン的幸福を求めている人たちが失敗を繰り返してお金と時間を注ぎ込むように、ダイエット商法の多くは仕組まれているのです。

 英語にはNothing is a quick fix.(世の中には簡単に即解決できるものなんてない)という格言があります。短期間の大変革より、長期間の小改革の積み重ねが好ましいでしょう。ダイエットにおいても、長く続く幸福を選ぶのであれば、セロトニン・オキシトシン的幸福を最優先に考えるべきです。何年もかけて蓄えた脂肪を、たった数週間で解決しようとしてしまう自分の心に「Why?」を問いただしてみてください。