「リバウンド」はあなたの意思が弱いからではない。ダイエットの落とし穴

食べたいものを我慢し減量に成功したのに、結局元の体重以上にリバウンドしてしまった。ダイエット経験者の中には、こんな悲しい思いをした人も多いのではないでしょうか。産業医として年間5万人に健康指導を行う総合内科専門医の益江毅医師は書籍『やせたい人はカロリー制限をやめなさい』の中で「リバウンドするのはあなたの意思が弱いからではなく、無理なカロリー制限のせい」と言います。そのメカニズムとは?(文・監修/総合内科専門医 益江毅)

せっかくつらいダイエットをしても
1年以内にリバウンドする理由

 現在、日本で主流となっているダイエットは、摂取カロリーを抑える、あるいは消費カロリーを増やす方法です。

 カロリーを抑えるためには、食事の量を減らし、カロリーの高い油ものを控え、糖分の多い甘いものや間食を我慢し、ひたすら気合と根性で空腹と闘い続けながら、一生懸命頑張って運動を続ける、いわば我慢のダイエットです。

 我慢するダイエットは、3カ月間は続けられても、半年も続けることはできません。大半の人が1年以内に挫折して、元の体重以上にリバウンドします。

 しかし、それは決して気合や根性が足りなかったためではなく、人間の生理的現象による結果です。

 人の体は、摂取エネルギーが減少すると、それに応じて消費エネルギーを抑えるように体を変化させます。いわば、体がエコモードになり、代謝が抑えられて体温も下がってきます。一般的に、カロリー制限を開始した直後は体重が順調に減っていきますが、その後しばらくして体がエコモードになると、消費エネルギーが低下し、カロリー制限を継続しているにもかかわらず体重の減少が止まってしまいます。これがいわゆる停滞期です。

 一方で、摂取カロリーを抑えていると、摂取カロリーを増やそうとして食欲を亢進させ、脂肪を体内に蓄える作用を持つグレリンというホルモンが増加してきます。このグレリンの増加こそが、カロリー制限によるダイエットを挫折させ、元の体重以上にリバウンドさせる大きな原因なのです。

悲しいリバウンドを引き起こすのは
「グレリン」が原因だった?

 このグレリンの過剰な分泌はカロリー制限後も1年以上にわたり継続したというデータもあります。

 一度ダイエットに失敗すると、その後長期間にわたってダイエットがうまくいかないのはこのグレリンが原因、と私は考えています。

 また、一般的に、カロリー制限を行うと、糖質だけでなく、タンパク質や脂質など他の栄養素の摂取量も同時に制限されます。カロリーを制限しなければ、目的とする糖質の摂取だけを抑えることが可能となり、タンパク質や脂質をしっかりとることもできます。その結果、筋肉量や代謝も減らさずに、効率的に体重を落としていくことができることに気づきました。

 カロリー制限をしていなければ、リバウンドの原因と考えられているグレリンの過剰な分泌も抑制できるのです。