一方で、「収入・財産」は幸福度に対して逆(マイナス)の効果を持つことがわかった。つまり、収入や財産の面で幸せを感じている人ほど、逆に幸福度が低くなる傾向があるということになる。

 田中社長は、「日本ではお金や裕福さが幸福の指標とされていたが、この価値観が崩れてきた。最近の若者は、地方に移住して自然と触れ合いながら自分にとって意味のある生活を求めるようになっている。価値観の変化が幸福度に影響を与えているのではないか」と分析。

 また、コロナ禍の収束に伴い、社員がリモートワークからオフィス出勤へと回帰している企業も多い。特に首都圏ではこの変化が明確で、幸福度の上昇率が伸び悩んでいる要因の一つとも考えられる。

(※)「幸福度」を目的変数、「幸せの要素」の7項目(「健康」「家族・家庭」「友人・知人」「恋愛」「収入・財産」「仕事・学業」「趣味・娯楽」)を説明変数として、回答結果を重回帰分析し、幸せの要素が幸福度に与える影響度を数値化した。なお、回答者一人あたり2.02個の幸せを感じる点を選んでいる。

年代別では「恋愛」の影響が顕著
40代は「仕事・学業」50代では「趣味・娯楽」

 未婚者と既婚者では、幸福度に影響を与える要素に違いが見られた。未婚者にとって「家族・家庭」の影響は既婚者よりも小さく、特に子どもの有無がこの違いを際立たせている。

 子どもがいる既婚者は、既婚者全体の結果と酷似している一方で、子どもがいない既婚者は「家族・家庭」の影響度がやや大きくなるが、子どもがいる既婚者と比べると小さい。代わりに、「恋愛」や「趣味・娯楽」「友人・知人」の影響度が強く表れた。

 年代別で比較すると、20代では「恋愛」の影響が強く、40代では「仕事・学業」、50代では「趣味・娯楽」の影響が、他の世代よりも強くなっている。

「この結果は、予想通りと言える。30代以降に『恋愛』の影響が減少するのは、自然な流れだろう」と田中社長。

 今回の幸福度ランキングは地方が上位にランクインし、首都圏とは異なる「幸福モデル」が見られる結果となった。自分の価値観や本能を優先する生き方が注目されているのかもしれない。

 この結果を受けて、読者の皆さんはどのような見解を持たれるだろうか。

(フリーライター 西嶋治美)