YouTube動画で勉強する時に「逆効果」になるNG手法とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

「聞く」×「見る」のインプットは取り込み方次第で脳の負荷が分散するため、脳機能の「ワーキングメモリー」を効率化できるという。記憶ツールとして動画を活用したインプット術を最新脳科学の観点から徹底解説。本稿は、星 友啓『脳が一生忘れないインプット術』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

科学的根拠に基づいた記憶の効率化
ワーキングメモリーを最大限に活用

 デジタルでのインプットに欠かせないのが、マルチメディアの環境です。

 インプットしようとする事柄について、文字だけでなく、ナレーション付きのイラストやアニメーションでわかりやすく解説されているものは数多くあります。

 今やYouTube動画は、エンタメのためだけなく、学習やインプットのツールとしても老若男女に幅広く使われています。

 この「聞く」と「見る」を総合したマルチメディアのインプットは、「聞く」だけのインプットよりも効果が高いことが科学的にも確認されてきています(1*)。

(1*)…Ritzhaupt A.D.,Barron A.(2008).“Effects of Time-Compressed Narration and Representational Adjunct Images on Cued-Recall,Content Recognition,and Learner Satisfaction.”Journal of Educa-tional Computing Research,39(2):161-184.

 その効果について、脳科学的な視点から少し説明しておきましょう。

 私たちの脳の主要機能に「ワーキングメモリー」というものがあります。

 長期や短期の記憶を現在の意識にホールドして整理したり組み合わせたりして、何らかの「コマンド」を意識の中で実行する働きのことです(2*)。

(2*)…Cowan N.(2008).“What are the differences between long-term,short-term,and working memory?”Progress in Brain Research,169:323-338.

 例えば、頭の中で「45+37」などの計算ができるのも、このワーキングメモリーが働いて、意識した数字に足し算を実行できるおかげです。

 このワーキングメモリーは、どんな人でも容量が限られていて、最近の研究では、3つから5つくらい(3*)のものを意識にホールドするのが限界だとされています。

(3*)…Cowan N.(2010).“The Magical Mystery Four: How is Working Memory Capacity Limited,and Why?”Current Directions in Psy-chological Science,19(1):51-57.

 そのため、効果的なインプットには、ワーキングメモリーの容量をうまく使うことが大切です

 そこで効果的なのが、入ってくる情報を「聞く」「見る」など、いわば、違った「チャンネル」からのインプットに分散させることです。