「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、この夏『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。今回は出版を記念して本文の「はじめに」より、一部を抜粋・再編集してお届けします。

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誰もが「親とのコミュニケーション」に悩んでいる

 親と子―。それは、この地球上で、最も濃密かつ深い“人間関係”の1つです。だからこそ、多くの人が親とのコミュニケーションで思い悩み、苦しんでいます。この記事を読んでくださっているあなたも、今まさに、親とのコミュニケーションに悩んでいるのではないでしょうか。

 そんなあなたに、伝えたいことがあります。それは「毎日、本当にお疲れ様です!」という気持ちと「悩んでいるのは、あなただけではありません」という事実です。

 私は東京都の板橋区や練馬区を中心に、訪問看護やリハビリ・デイサービス事業を12年ほど営んでいます。その前は大学病院のリハビリテーション科で、13年ほど入院患者さんや外来の患者さんのリハビリ担当をしていました。

 これまで、のべ数万人の患者さんや利用者さんと接するなかで、リハビリを受ける本人だけでなく、家族の皆さんから、さまざまなご相談をいただいてきました。その相談のほとんどは「お母さん(お父さん)が私の言うことを聞いてくれない」というものです。私の母親の年齢も90歳近くですので、ご家族の気持ちを自分ごととして想像することができます。