日本の相続税の最高税率は55%ですから、半分以上が取られてしまいます。1000億円の資産があっても450億円しか残りません。節税対策などを何もしなかったら、次世代、次々世代とどんどん資産が減り、富裕層からあっという間に転落してしまうのです。

 私は個人的に相続税をもっと低くして、欧州のように富裕層が社会貢献してくれるようになるほうが望ましいと考えています。

 日本の相続税負担が大きい結果として、実は多くの富裕層や会社経営者が海外に出てしまっています。代表国がシンガポールです。最大の理由は税制の優遇で、シンガポールには相続税や贈与税がありません。

 ただ、日本政府も相続税逃れの対策をしており、相続税法の「10年ルール」というのがあります。これは家族全員で海外に移住しても、10年未満ならば海外に移した資産の相続税や贈与税が課せられるというルールです。逆に言うと、移住期間が10年を越えれば、海外に移した資産に関しては、原則的に日本の相続税や贈与税を課せられないということです。

 以前は「10年ルール」ではなく「5年ルール」だったのですが、富裕層を海外に逃さないために、ルールが厳しくなりました。

 こうした事態が起きているというのは、大きな損失だと思います。本来は富裕層に日本いてもらって、ビジネスや消費といった経済活動をしてもらったほうがいいのです。