そういう人生は果たして幸せかどうかです。私には幸せだとは思えません。いくらお金を持っていても、そんな不自由な生活は決して楽しくないと思います。

 ですから日本人の富裕層の場合、相続税をどのように考えるかが大事なポイントになります。節税目的でシンガポールに移住しても、英語が話せないと生産性のある活動ができないですし、楽しい生活を送るのは難しいです。

 しかも税法というのは変わります。現在は「10年ルール」ですが、以前は「5年」だったのです。5年ルールの中で、がんばって3年とか4年海外で暮らしていたところに、ルール変更で10年に延びたために、諦めて帰国した人もいます。

 だとすれば、その失った3、4年間は何だったのかということになります。人生後半の大切な時間をムダに費やしたことになります。

 同じことが繰り返される可能性があります。節税対策で日本を出ていく富裕層が増えれば、日本政府はまたルールを変更して、いまの10年から15年に延長するかもしれません。

 ですから、私の考えとしては、適度な節税はかまわないですが、税金をゼロにするために海外移住して、心穏やかでない、楽しくもない日々を過ごすことには否定的です。