税逃れで海外移住する富裕層
「第二の人生」の哀れな実情

 今年7月の英国の下院議会選挙で、労働党が過半数の議席を獲得しました。14年ぶりの政権交代で、新たに労働党政権が発足しました。富裕層に対する増税議論があり、今年1万人の富裕層が英国から欧州諸国に出ていくといわれています(7月3日 日経新聞)。

 1万人というのはかなりの規模で、英国経済にとっても大きな損失になるでしょう。いずれにしても、税金というのは想像以上に人を動かす原動力になるのです。

「税金逃れ」で海外移住する富裕層が背負う“大きすぎる代償”…不幸で哀れな「第二の人生」の実情アリスタゴラ・アドバイザーズ会長の篠田丈氏 Photo by Wataru Mukai

 ただ一方で、税金対策でシンガポールなどに移り住んだ富裕層が幸せに暮らしているかというと、必ずしもそうではない現実があります。

 最大の問題は言葉です。シンガポールの公用語は英語です。英語が堪能な人は現地でビジネスをはじめるなど好きなことができますが、英語が話せないと活動範囲が日本にいたときより狭まります。

 たとえば、昼は日本人とゴルフをして、夜は日本人ばかりが集う和食レストランで食事をする。それを10年以上続けないと、相続税の免除対象にならないのです。

 もちろん、海外に移住しても、一時帰国は認められています。年間180日以内までは、税法上日本に居住したことにならないルールになっています。ですから、そういう海外移住した富裕層は頻繁に日本に帰国しています。そして滞在日数を数えながら日本で暮らしているのです。