つまり、ソ連がプロパガンダの主体であるにもかかわらず、それを秘匿した捏造記事により、政治指導者や国民をソ連に都合のいいように誘導した。

 これは発信者を秘匿して偽情報を流す「ブラックプロパガンダ」の典型であったといえよう。

ターゲットにされた自衛官たち
多岐にわたるロシアの諜報活動

 最近では、2013年5月に、退官した元東部方面総監の陸上自衛官が、ロシアの駐在武官でGRU所属とみられるセルゲイ・コワリョフに対して、陸上自衛隊の運用教範である「普通科運用」などを渡していたとして警視庁に逮捕された。

 手渡した教範には機密情報は含まれていないとされるが、同武官は、自衛隊高官OBが現職自衛官に対して有する影響力を活用して、陸上自衛隊に何らかの影響力工作を試みようとしたとの見方もある。

 また、筆者が捜査の現役を退いてからのことであるが、テレビ番組制作会社の代表が、ロシア機関員と思われる人物にアプローチを受けていたケースを確認した。

 当然、民間人である筆者は、その活動の内容までは把握できなかったが、ロシア機関員がメディア関係者を通じて影響力工作を試みている状況は推察できた。