筆者も、日本人がロシア機関員と接触を重ね、徐々に親密さを増しながら談笑し、時間をかけて取り込まれていく様を目の当たりにしたことがある。

 この際、違法行為が明白ではない、または違法行為そのものが存在しないことがほとんどだ。日本人とロシア機関員が関係を構築しただけでは違法行為は発生しないのである。

 その手法は、対象となる日本人の得意領域であり、かつロシア機関員が狙う情報関心領域に関し、「教師と教え子の関係」のように、ロシア機関員が「教え子」となり、日本人を「教師」のように持ち上げ、「勉強させてほしい、学びたい」という謙虚な姿勢を見せることで、対象の日本人を安心させつつ承認欲求を満たすという手口である。

偶然を装って近付く機関員たち
ターゲットとの信頼関係構築を重視

 対象者の選定も時間をかけて慎重に行われる。ソフトバンク事件(編集部注/ソフトバンクの5G基地局設置に関する情報が在日ロシア通商代表部のカリニン元代表代理に渡っていた)では、「元ソフトバンク社員(以下、社員)は最初にカリニンではない別の通商代表部職員(以下、職員)から帰宅途中に街で声をかけられ、連絡先を交換。

 その後、職員は2017年に帰国するが、この際、社員をカリニンに紹介した。以後、社員はカリニンから繰り返し飲食店で接待されるようになった」と報じられている。