マスコミ・自衛隊・大企業の「操り人形」をズブズブに…ロシア人スパイの恐ろしすぎる秘密工作写真はイメージです Photo:PIXTA

ロシアによる日本での諜報活動範囲は多岐にわたり、あらゆる場所で対象者へのアプローチが行われているという。どのようにして相手と絶対的な信頼関係を築き、確実に取り込んでいくのか。その卓越した手法に迫った。本稿は、上田篤盛・稲村 悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社)の一部を抜粋・編集したものです。

レーニン時代から受け継がれる
「ブラックプロパガンダ」の手法

 今日のロシアが、ロシア・ウクライナ戦争においてメディアやSNSを介して偽情報などを流し、国際世論に対して影響力工作を仕掛けていることは、いまさら言うまでもない。

 実は、影響力工作のもとはソ連の「アクティブ・メジャーズ(積極工作)」であるとされる。これは、他国の政策に影響を与えることを目的に、伝統的な外交活動と表裏一体で行われる偽情報の流布や、暴力を伴う謀略活動である。

 古くは、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)に所属したゾルゲが、朝日新聞記者の尾崎秀実をエージェントとして活用し、旧陸海軍の作戦戦略を北進から南進に転換させた。

 冷戦期ではKGBによる「周恩来の遺書」という事件が確認されている。当時、産経新聞編集局次長の山根卓二は、サンケイ新聞(1976年1月23日付)で「周恩来元首相(1976年1月8日死亡)が遺書を残し、その中で毛沢東が死ぬ直前に中国の指導部内で深刻な対立があったことを示唆した」という署名記事を書いた。

 この記事の情報源は秘匿されたが、のちにこれは日中国交回復の妨害や周恩来死亡後の中国指導部の信頼性失墜を狙ってKGBが作成した偽文書であったことが明らかになった。

 KGBは、レーニンが死の直前に書いた手紙によってスターリンへの権力継承が遅れたことをヒントに、このような偽文書を思いついたとされる。

 遺書が日本の保守系大手新聞で報じられたのをソ連のタス通信が伝える形をとったことで、記述の真実性が担保され拡散効果が高まった。