内山さんが目指していく研修と、自ら描く講師像

 世代や立場が違っても、あるいは、違うからこそ、対話やコミュニケーションが大切なのだろう。内山さんの“ワークショップ型の研修”は、まさに、コミュニケーションに重きを置いてつくられている。

 以前、私が見学取材したフォロー研修(*5)で、内山さんはワークの時間制限を緩やかにして、受講者たちの意見交換が活発になると、新たな「問い」を追加するなど、その場の様子を見ながらファシリテーションをしていたのが印象的だった。予定調和ではない、リアルなコミュニケーションが研修での学びを深めていた。

*5「『フレッシャーズ・コース』(FC)を活用した自律型新入社員研修」のフォロー研修は、年に3回行われている。

内山 研修においては、受講生が思いついたことを、かっこつけた言葉ではなく、自然な言葉で語り合えるとよいと思っています。文字のコミュニケーションでは、“いい子”的な書き込みをしてしまいがちですが、思いついたことをその場でパッと話す場合は、表現に多少の誤りがあったとしてもさほど目立ちません。私の研修は、思いついたことを素直に交換し、みんなで語り合い、考えを整理していく場にしたいです。また、それぞれのワークが完了する時間には個人差がありますが、その差をできるだけ許容したいと思っています。早くできた人は、できずにモヤモヤしている人に手を差し伸べることで自分の考えがいっそう明確になり、相手は、「だから、私はモヤモヤしていたのか」と気づくことができるのです。

 ベテランの研修講師でありながら、「『先生』にはなりたくない」と笑う内山さん。その発言に、内山さんならではの研修への姿勢がうかがい知れる。

内山 本来、ワークショップには、「先生」という存在はいません。研修では、私は「先生」と呼ばれることもありますが、本心では、「先生ではない立場になりたい」と思っています。私がたったひとつの解を持っているわけではなく、私の解を覚えようとして、みなさんが研修に参加する必要もありません。それよりも、研修後に、研修での気づきを試したくなることが重要です。自分が納得できる解を、研修の中で他者とコミュニケーションをとりながら見つけていくことが、私の研修の目指すところです。テーマをテーブルに乗せ、コミュニケーションしやすい環境をつくり、頭の中で起きる変化を促しながら、「では、どうしましょうか?」と、問いを立てていく――私は、そんな役に徹していきます。

企業での研修においては、「『先生』にはなりたくない」と笑顔を見せる内山さん。