インターネット普及で
「匿顔」での選考に拍車

 インターネットが本格的に活用される前の2000年以前を採用面接の第1期とするなら、01年以降は第2期の始まりです。その最大の変化は、インターネットを使った応募の自由化(オープン化)でしょう。

 学生側は興味のある企業にインターネットを通して片っ端から応募できるようになり、「とりあえず」エントリーすることが可能になりました。おのずと、企業側が受け付ける応募数も飛躍的に増えました。人事担当者は面接の前にエントリーシートや能力テストなどで学生を絞り込む必要があります。採用の初期段階は、顔を見ないという意味で、「匿顔」での選考なのです。就活期間も第1期よりも長期化しました。

 一方で、学生の側にも会社選びが難しくなるという現象が生じました。応募の自由化によって選択肢が増えれば増えるほど、実際の選択が難しくなるというパラドックスが生じています。いくら考えても企業の内部のことは分からないからです。

 また、本来であればセミナーや面接の場で社員に直接ふれることで、職場の雰囲気はもちろん、その表情や語り口、物腰などからその会社のイメージ(社風)をより具体的につかむことができました。しかし、インターネット上の企業紹介を見ているだけでは限られた客観情報しか得ることはできません。面接の前に選考が終わってしまうと、学生側のショックも大きいものです。

 企業によっては、エントリーシートをやめて、10人程度の短時間の集団面接を何度も行い、学生本人の顔つきを見て一定数に絞り込む対応に変更した企業もありました。エントリーシートを熟読するよりも、一目でも直接顔を見た方が人材を見極めることができると考えたのです。

 学生が顔写真と共に作成した自己紹介サイトを企業側がアクセスするという新たな採用の仕組みをつくって起業した会社も現れています。これらは、「匿顔」の採用の弊害に対応しようとしているのです。

 匿顔といっても、内定を出す前には必ず本人との対面での面接を実施しています。ルッキズム的な意味ではなく、やはり実際に会って顔や表情を確認しなければ採用OKと決断できないからです。