土と芽写真はイメージです Photo:PIXTA

日本の土壌は世界的に見て比較的良好な状態にあるものの、その潜在能力は十分に引き出されていない。日本の生産能力を上げるためにも、農産物価格の引き上げや大規模農家への支援強化など、抜本的な対策が必要なのだ。※本稿は、有坪民雄『誰も農業を知らない2 SDGsを突きつめれば、日本の農業は世界をリードする』(原書房)の一部を抜粋・編集したものです。

日本の土壌のポテンシャルは高い
その気になれば相当な生産が可能

 最も大きいリスクは、世界的な土壌の劣化です。現在、世界中で土壌侵食や塩害などの土壌の劣化が問題になっています。アメリカやカナダ、そしてウクライナといった世界の穀倉地帯と呼ばれる地域の土はチェルノーゼムと呼ばれる土です。

 チェルノーゼムは世界的にもトップクラスの農業生産力がある土で有機物やカルシウムを多く含んだ中性の土ですが、土壌侵食などの要因で毎年少しずつ減っていることが専門家から指摘されています。アメリカが不耕起栽培(編集部注/農地を耕さずに作物を栽培する農法)に熱心に取り組むのも、これ以上の土壌侵食を放置するわけにはいかないという危機感ゆえです。

 ウクライナも戦争によって国土が荒廃しているのは確実ですから、戦争が終わっても生産を戻せるかわかりません。またウクライナでは少子化も進んでいます。ただでさえ出生率が2020年でも1.22と日本よりも低い国であるのに加えて、基幹労働者となる若い男性の多くが戦争に取られていたり、国外に逃げたりしています。他にも塩害など農業の危機に瀕している国は少なくありません。