日本は1000ヘクタールの面積を一家族でやれるような大規模農業には不適ですが、土壌のポテンシャルの面では比較的恵まれており、その気になれば相当な農業生産が可能です。

多収品種を本気で開発すれば
日本は8億人分の食料を賄える

 たとえばコメを挙げてみましょう。日本では以前、日本の稲作技術は二流であると、したり顔に言う“有識者”がいました。そう断定する根拠は、当時オーストラリアなど日本と比べて面積あたりコメの収量の高い国がいくつかあったからですが、笑止千万です。

 当時の日本には多収のコメは求められておらず、味をよくすることで減り続けるコメの需要を増やそうとしていたことを無視していたから、こんなことが言えました。コメの消費量が減り続け減反と呼ばれる生産制限が行われていた時代に多収品種など入れていたら、ますますコメが余る……だから日本は技術があっても多収品種の開発をしようとはしなかったのです。

 しかし、時代は変わりました。近年はただでさえ安くなっているコメをもっと安く調達したいと考える外食産業が多収品種を求めています。こうした多収品種のコメの価格は安いものの、収量が従来品種より多いためトータルでの売上は向上することから、一部の農家は外食産業の求めに応じるようになっています。