漠然としたネガティブ・ワードが
目立つトランプ前大統領

 トランプ前大統領の発言で最も目立ったキーワードは、「lie(嘘)」でした。5回も繰り返して使っています。

 例えば、ハリス副大統領の発言を受けて、

「Thank you, Vice President Harris, there she goes again. It's a lie.」
 (ありがとう、ハリス副大統領。また始まったが、それは嘘だ)※以下、()内は筆者の意訳

「The states are now voting what she says is an absolute lie.」
(各州の投票結果が、彼女が言っていることが全くの嘘だということを示している)

 などと、ハリス副大統領の発言をlieを使って強烈に否定しました。

 そもそも、ハリス副大統領の発言に対して「嘘だ」と何度も返す必要があったこと自体、トランプ前大統領が攻め手に欠けて、劣勢だったことを表わしていると言えるでしょう。

 苦しい状況に置かれたトランプ前大統領が、攻め手として繰り返したキーワードは、「destroy(破壊する)」でした。例えば、次のように発言しています。

「But if she won the election, the day after that election, they'll go back to destroying our country.」
(もし彼女が選挙に勝ったなら、選挙の翌日、彼女たちはわれわれの国を破壊を再開するだろう)

「I built one of the greatest economies in the history of the world, and I'm going to build it again. It's going to be bigger, better and stronger, but they're destroying our economy. They have no idea what a good economy is.」
(私は世界の歴史上最も偉大な経済の一端を築き上げた。今後もう一度、より大きく、より良く、より強くするつもりだ。しかし、ハリス陣営はわれわれの経済を破壊しようとしているし、良い経済が何なのか全く分かっていない)

 このようにトランプ前大統領は、destroyを繰り返し使っているのですが、その内容は具体的ではありません。「民主党は経済政策が分かっていない」と責めるものの、具体的な言及はないまま、destroyを連発して自身の主張を繰り返すのみです。これでは、説得力に欠けたディベートだったと言わざるを得ません。