自ら喜んで個人情報を
差し出すSNSユーザーたち

 想像してみよう。いきなり家を訪ねてきた人に、次のような情報を役所に登録するよう言われたとする。姓名、生年月日、電話番号、メールアドレス、住所、学歴と職歴、配偶者/パートナーの有無、家族全員および友人全員の名前と写真、できるだけ古くからの自分の写真と動画、政治的な志向、旅行歴、好きな本、好きな音楽、好きな……とにかく、なんでも。あなたは登録するだろうか。

 SNSではこういった情報(以上のもの)を、私たちは進んで提供している。しかも、運営企業がその情報をどう使うかを気にすることもほとんどない。フェイスブックの元プロダクトマネージャー、アントニオ・ガルシア・マルティネスは自伝『サルたちの狂宴』〔石垣賀子訳、早川書房、2018年〕にこう書いている。

「いまのマーケティング業界の最大の関心ごとは、こうした情報をどう結びつけるか、その結びつきをだれがどう管理するかにある。そのために多額の資金が注ぎこまれ、フェイスブック、グーグル、アマゾン、アップルではさまざまな策略が絶えず編みだされている」