良識の有無は、身近な例で言えば、トイレを使ったときに表れます。トイレを使った後、次の人のことを考えてきれいにしようとする人と、何も考えない人。後者は、「汚い様子を見たときに後の人がどう思うか?」とネガティブなことを想像できないのです。

「ネガティブを想像をしない脳みそ」は、ある意味平和です。はき違えたポジティブ、とでもいいましょうか。

 動物虐待や不法投棄なんかも同じ。動物たちの「痛い」という気持ちや、もう少し先の未来を想像できれば、「動物がかわいそう」とか「せめて誰かに見つかるところに」とか考えられるはず。自分が得することしか考えない人には、相手が不快になるかもしれないというネガティブ思考がないのです。その場から逃げられれば、人に迷惑をかけてもいいと考えてしまう。お金を稼げれば、人に迷惑をかけてもいいと考えてしまう……。なんと悲しいことでしょう。

 迷惑系YouTuberの動画を面白おかしく見ている人が、無意識のうちに感化され、モラルの線引きが揺らいでしまうことも非常に危険です。「お金をもうけられれば、迷惑行為をしてもいい」と、本当に勘違いする人が出てくるのです。

SNS型投資詐欺が急増!
個人も企業も「自分がよければいい」でいいの?

「自分が得をすればいい」という風潮は、個人だけではなく、もしかしたら世の中にも広がっているのかもしれないなと思うことがありました。例えば、昨今、FacebookなどSNSで著名人の名をかたった投資詐欺広告が増えていることがニュースになっています。しかし、プラットフォーム側の対応はあまり敏速ではなく、一方で名前を使用された著名人が自ら規制強化を主張していることも報じられています。

 プラットフォーム側も対策を進めているとはいえ、十分とはいえません。「投稿されたコンテンツに責任は持たない」という態度に、わたしは違和感を覚えました。

 警察庁の発表によると、今年1〜4月に発生したSNS型投資詐欺の被害額は約334億円となっています。これが多いか少ないかをイメージしづらい人に分かりやすく伝えると、昨年1年間の合計が約278億円、つまり、たった4カ月で昨年の被害額を50億円超上回るほどの額になってしまったのです。

 SNSはユーザー数が多いプラットフォームであるだけではなく、詐欺を働く側からすれば「だましやすい人」にアプローチできる場所でもあります。