楽天グループの財務危機は終わっていない。急転直下の外債発行で「グループ解体」を回避したものの、借金で借金を返済する綱渡りの資金繰りは財務を圧迫し、利払い負担は年間560億円規模に達する見通しなのだ。特集『楽天 延命』の#3では、当面の社債償還リスクを乗り越えた楽天に、今なお潜む財務危機の正体に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)
大型の資金調達で手元資金を確保
「危機回避」を強調する三木谷氏
「2025年までの流動性ギャップは解消した」
24年8月9日の決算説明会で、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、最大のリスクとなっていた24~25年の社債償還危機を克服したと強調した。
24~25年で8000億円を超える社債償還を控えていた楽天は、今年2~4月に米ドル建て社債などで総額6190億円を調達。これによって、当座の償還リスクを回避するめどが立った。
もともと楽天は、米格付け会社のS&Pグローバルから投資不適格級の「BB」格付けを付与され、国内の機関投資家に向けて社債発行で資金調達するのは難しい状況にあった。
このため楽天は、23年に楽天銀行や楽天証券の株式売却に踏み出しており、追加の資産売却で「グループ解体」は避けられないとみられていた。そんなタイミングで米国市場の金利環境が好転し、楽天の「ハイイールド債」に海外の買い手が現れたというわけだ。
これで勢いづいた楽天は8月、楽天モバイルの通信設備の一部を活用する10年間の「セール・アンド・リースバック」取引で1500億~3000億円を調達する方針を発表。その結果、社債償還資金だけではなく、当面の運転資金を賄う手元資金も潤沢に確保する見通しになった。
しかし、である。綱渡りの資金繰りを続けてきた副作用は大きい。24~26年の3年間の社債償還を新たな資金調達で乗り越えるためには、利払い負担が年560億円にも上ることがわかった。
次ページでは、借金で借金を先送りすることで利払い負担が増大する「いびつな財務構造」を明らかにするとともに、24~25年の社債償還を乗り越えたと強調する楽天の財務が、いまなお危機にある実態を詳述する。