楽天 延命#5写真:つのだよしお/アフロ

楽天グループは、携帯電話事業の黒字化に生き残りを懸けている。それに失敗すれば追加の資金調達に支障を来し、再び事業存続の危機に陥りかねない。それを支えるのは「パートナー回線(ローミング)」を提供しているKDDIだ。特集『楽天 延命』の#5では、綱渡りの楽天の存廃シナリオを探る。
(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)

携帯事業の黒字化は必達目標
金利地獄から脱却するための「正攻法」

 楽天モバイルは、顧客獲得のマーケティング費用を足し戻して、携帯電話の顧客が他の楽天サービスを利用した場合の「利益押し上げ」を含めれば、すでに黒字――。

 8月9日の決算説明会で、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「いろいろな条件を付け加えると、すでに黒字」との主張を会見冒頭で強調した。ただし、大量のポイントや広告宣伝費で携帯電話の顧客を獲得している楽天が、その費用を差し引いて利益が出ていると訴えるのはアンフェアだろう。

 楽天の「携帯事業の黒字化」に向けた執念はすさまじい。携帯事業のEBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)ベースで2024年内に単月黒字化、25年に通期黒字化を目指す方針だ。

 楽天が、携帯事業を開始した20年以降、モバイルセグメント全体の設備投資の累計は1兆5731億円に上っており、連結自己資本の8600億円をとうに超えている。もはや撤退は許されず、グループの存続を懸けて携帯事業の黒字化は必達目標だ。

 携帯事業で巨額赤字を垂れ流してきた楽天は、多額の社債償還資金の借り換えラッシュにより、高い金利負担を強いられている。     
          
 金利地獄から逃れるための奇手妙手はない。まずは、いち早く金融市場からの信頼を回復し資金調達環境を改善する。その上で、巨額の有利子負債を圧縮し、自己資本の増強を図っていくという正攻法しか残されていない。

 次ページでは、楽天の財務危機の元凶である携帯事業の巨額赤字を削減する“絶対条件”を明らかにするとともに、楽天のグループとしての事業存続のシナリオを検証する。