地球上すべてのパンク・ロックの基礎を決定づけた怪物バンド、セックス・ピストルズのフロントマン「ジョニー・ロットン」。この伝説のキャラクターを自らプロデュースしたジョン・ライドン(本名)は、ロットンの元ネタはシェイクスピアのリチャード3世だと明かしている。ライドンの教養のおかげで、ピストルズは“伝説”になることができたのだ――。本稿は、川崎大助『教養としてのパンク・ロック』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
ジョニー・ロットンの
元ネタはシェイクスピア!?
一流パンクスの「教養」とは、たんに若者文化、ロック音楽の知識だけに留まるものではない。一例を挙げよう。たとえばジョン・ライドンの教養がある。
ロンドン・パンクどころか、地球上すべてのパンク・ロックの基礎を決定づけてしまった怪物バンド、セックス・ピストルズのフロントマン「ジョニー・ロットン」として世を震撼させた彼は、基本的にすべての歌詞を書き、歌ったのだが、決して博覧強記の人ではなかった。だがしかし、彼についてこう言い切ることはできる。
「自らに必要なことはすべて、『教養』として蓄積完了している、切れ味のいい知性と批評眼をそなえた」そんな若者だったのだ、と。10代終盤にして、すでに。
その証拠のひとつが、ライドンが「演じた」初代パンク・ヒーローと呼ぶべき「ジョニー・ロットン」のキャラクター設定だ。ここには、シェイクスピア作品からの影響が大きい。16世紀から17世紀にかけてイングランドで活躍した、英文学史上に燦然と輝く劇作家にして詩人の、あのウィリアム・シェイクスピアのことを、僕は言っている。