「教養の上に立った」
強靭なイメージ

 これこそが「教養の力」にほかならない。だから聴き手である我々としては、ライドンがリチャード3世を「使った」動機をつかまえてみる必要がある。さらにライドンは、50年の映画『シラノ・ド・ベルジュラック』にてホセ・フェラーによって演じられた、醜いながらも純真な近衛騎士シラノのイメージも大変お気に入りだった旨の発言をしている(「映画のなかの見捨てられた役に惹かれる」と言っている)。つまりここらへんが、ジョニー・ロットン像の元ネタの一部だった、ということだ。まさに「教養の上に立った」強靭なイメージこそがパンク・ロックを生み出したのだ。
 
 こうした点を把握することが、セックス・ピストルズへの、パンク・ロックへのより深い理解を生むことはもちろん、当時から現在にまで至る「パンクによって変えられた社会」の来し方行く末を、立体的に把握することにも大きく貢献するはずだ。もってポスト・ポストモダン社会のありようをも、謙虚に見つめるための思考装置ともなり得るはずだ。