ただ、これはちょっとビミョーな話だ。自治体の包括的外部監査は、確かに知事と外部の公認会計士などが契約を結んで行われるが、知事の「指示」や「意向」が反映されるものではない。むしろ、知事は「監査される側」であり、「こんな問題があることに気づかないとはあなたの目は節穴ですか?」という批判も免れない立場だ。

 というのも、斎藤知事は21年12月の知事就任直後に外郭団体について「ゼロベースで見直すことが必要」と表明している。あれから1年4カ月がたって、「ひょうご埠頭」や「新西宮ヨットハーバー」について何を見直したのかという疑問はある。

 なので、これをもってして「港湾利権の闇を暴いたヒーロー」となるのはおかしい。例えば、外部監査によって不正が明らかになった企業の社長に対して、「不正を暴いたのは、社長の手柄だ!」と称賛するようなものなのだ。

 もっと言ってしまうと、本当にこれで闇組織が暗躍する港湾利権にメスが入ったというのなら、県職員が怪文書をつくってどうこうという以前に、港湾事業を外部監査する公認会計士らやその家族などに嫌がらせが入るはずではないか。

 という話をすると、「いやいや、そうではなく斎藤知事が潰されたのは天下りを厳しく規制していたからだ」というようなことをおっしゃる人も多いのだが、そちらの「説」もちょっと首を傾げざるを得ない。