「自力整体」とは、整体プロの技法を自分におこなう人気メソッドです。現在1万5000人が実践中。「久しぶりにぐっすり眠れた!」「10年間苦しんできた慢性痛から解放された!」「健康的にダイエットできた!」と絶賛の声が続々。「3分以内でできる悩み解決ワーク」を集めた著書『すぐできる自力整体』も好評。著者の矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語ります。今回は『すぐできる自力整体』から、認知症予防に役立つ自力整体をお届けします。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)

【整体プロが指南】運動をしても「認知症になる人」「ならない人」の違いとは?

認知症予防に自力整体をすすめる理由

認知症の発症原因は様々ですが、運動習慣も予防の一つとされています。
しかし毎日の日課として運動(体操)をされていても、認知症を発症される方もおられます。

自力整体の考案者である私の父(矢上裕)は、「自力整体を<体操>という感覚でおこなっていては、認知症の予防にはならない」と生徒さんに伝えています。
「整体している」という感覚でやらないと、効果は期待できないということです。

音楽にのせて体を動かしたり、指導者の号令に合わせて動かしたりする運動を「体操」と呼びます。体操の効果としては血流が良くなった、運動不足が解消された、カロリーを消費できたというご褒美はありますが、呼んで字のごとく「体を操る」、脳から体への一方通行の命令です。

一方、「自力整体」は体操と違い、体を正常な状態に保つためのメンテナンスです。
まず体に刺激を与えることからはじまります。ポーズをとるのではなく、マッサージやツボ刺激を与えているのです。すると体から反応が脳に返ってきます。「痛い」「気持ちが良い」、またはその中間の「イタ気持ち良い」など。

その体の反応をキャッチした脳は、「どのくらいの強さが良いのか」「どの角度がツボにはまっているか」「どの深さまで刺激を届けたらいいか」と判断。

実はこれが、最大の脳のトレーニングになると実感しています。「自力整体は、脳と体がキャッチボールをしている」と考えるとわかりやすいでしょう。父は40年ちかく生徒さんを指導し、それを実感しています。最期まで頭も体もお元気だった方々を多く見届けてきたのです。

脳と体のキャッチボールの習慣が身につくと、日常生活の中でも食べすぎたり、飲みすぎたりすることもなくなります。おのずと体と相談しながら行動を決めるという思考の習慣がつくのです。

毎日の観察日記をつけるような感覚で、昨日の自分と今日の自分を比べて、どんなときに体が硬いか、柔らかいか、痛いか、気持ち良いか、など研究してみてください。こんなことが認知症予防につながるのです。

最後に、体の柔軟性を観察できる「開脚座」のワークを紹介しましょう。
背中が丸まってしまう、脚が広がらない、股関節が痛すぎる。そんな体の感覚に意識を向けることが、認知症予防の第一歩。気づいて生きるのか、気づかず生きるのか、老後は大きく変わります。

ワークは次のとおりです。

【整体プロが指南】運動をしても「認知症になる人」「ならない人」の違いとは?矢上 真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗