GHQの要請で来日した教育使節団の報告書は、「少数者の特権と特殊の利益が、多数者のために開放」されるべきと説き、「帝国大学卒業生に附与されてゐる優先的待遇」の是正に言及している(「米国教育使節団報告書」)。大学の数を増やして広く門戸を開放し、多くの者が高度な知識を身につけられるようになれば、東大生ばかり優遇されることもなくなる、という意味に解することができる。

帝大特権はなくなるのか
さまざまな未来予測

 新制大学が大量発足した直後の1950年頃には、大学に関するさまざまな未来予測があった。のちに早稲田大学政治経済学部の名物教員となる科学史家の筑波常治は、次のように回想する。

文部当局は、「これからは、古い大学も、新しい大学も、すべて平等になる。」と、当局の方針を強調した。予備校の教師は、「数年たてばもとどおり、旧帝大がよくなるから、無理してもそこへゆきなさい。」と、おおいにアジりたてた。私学関係者は、「今後は国立よりも、伝統を重んじる私立の方が、程度が高くなる。」と、アメリカの場合を例にひいて、さかんに宣伝した。(『破約の時代』)